胆嚢は肝臓で生成された胆汁を貯留・濃縮し、十二指腸へ排出する働きをしています。
本来、胆汁は黄色くサラサラした消化液ですが、肝臓の異常やホルモン異常などが基礎疾患にあると胆汁がドロドロした胆泥となり、胆嚢粘膜が過形成を起こします。この結果、弾力性の強い粘液物質が過剰に貯まり、硬くなった状態を胆嚢粘液嚢腫といいます。
精巣腫瘍は通常10歳以上の高齢犬で多い病気です。
セルトリ細胞腫、間細胞腫、精上皮腫のいずれかである場合がほとんどで、前立腺過形成、乳房の雌性化、両側性の対称性脱毛などの症状が認められます。
精巣腫瘍は一般的に良性であるものの、まれにリンパ節や肝臓、肺などに転移することもあります。またセルトリ細胞腫は時に重篤な骨髄抑制を生じ、死に至ることもある病気です。
写真は未去勢の雄犬ですが、乳頭が雌犬のように発達している様子がわかります。
肺がんは人と同じように動物にも稀に認められる病気です。家族が気づく最初の症状としては、空咳や呼吸困難、活力の低下などが挙げられます。しかしながら、症状がみられた場合は癌が進行している状態と考えられ、症状がない場合の予後は平均18ヶ月であるのに対して、症状がある場合は8ヶ月と報告されています。また、初期に発見されれば手術により根治が期待できますが、胸水が溜まったり、転移した状態で発見されると有効な治療法がないため、定期的な健康診断で早期発見することが重要な病気です。
フェレットでは副腎腫瘍が比較的多くみられます。4〜5歳をピークに発症し、雌雄ともに発症します。
代表的な症状は脱毛ですが、写真のように部分的に脱毛する子から全身脱毛してしまう子まで様々です。
特に雄フェレットは前立腺肥大や前立腺嚢胞を伴うことがあり、排尿障害を起こすため非常にやっかいな病気です。
インスリンは血糖値をコントロールするために膵臓のβ細胞から分泌されるホルモンで、血糖値が高いと放出され、低いと放出されなくなります。このβ細胞の腫瘍をインスリノーマと呼びます。
インスリノーマは中高齢のフェレットでは最も多い腫瘍とされ、当院でもよく遭遇する病気です。
「元気がない」「ケージにいる事が多い」「後ろ足が弱そう、ふらつく」「流涎(よだれ)」などが主な症状です。低血糖が重度になると痙攣や発作、昏睡状態に陥り、最悪の場合死に至ります。
中高齢で発症するため、低血糖によるこれらの症状を加齢によるものと勘違いしてしまい、発見が遅れる事があるので注意が必要です。
副腎は腎臓の近くにある小さな臓器で、生体内の恒常性を維持するために重要なホルモンをつくる役割をしています。
副腎は外側の皮質と内側の髄質に分かれ、それぞれホルモンを分泌しています。アジソン病とはこの副腎皮質の機能が低下し、ホルモンが不足することによって様々な症状が起きる内分泌疾患です。
典型的なアジソン病では副腎皮質全体が委縮しコルチゾールとアルドステロンの両方が不足します。コルチゾールのみが不足する非定型アジソン病も知られています。
アジソン病の一般的な原因として自己免疫性の破壊と遺伝性疾患が知られていますが、明確な病因はわかっていません。
慢性的な便秘・排便障害が続くことにより、結腸(大腸)の運動性が低下し持続的に拡張してしまった病態を巨大結腸症といいます。
症状は排便困難だけでなく、しぶりや血便、食欲不振、嘔吐などがあります。重度になると腸内で有害なガスが発生し、それが腸管から吸収されると全身状態が悪化していきます。
口腔メラノーマ(悪性黒色腫)は、口腔内腫瘍のなかで発生頻度・悪性度ともに高い腫瘍です。進行が早く、発見された時にはリンパ節や肺に転移していることがあります。
発生部位としては歯肉が最も多く、舌や口唇などの皮膚粘膜移行部の粘膜面や軟口蓋にも発生します。
口からの出血や、よだれの増加、口臭の悪化で気づかれるケースが多いです。
メラノーマはメラノサイト由来の腫瘍のため、多くは腫瘍細胞にメラニン顆粒を含み、黒色あるいは褐色という特徴的な見た目でメラノーマを疑うことができますが(図の矢印)、この顆粒が乏しい場合(乏色素性メラノーマ)には口腔粘膜と同様の色をしており、見た目だけで判断することが難しいことがあります。
マラセチアとはカビの一種(真菌)で、健康な動物の皮膚や耳道などに常在しています。しかし、アレルギーなどが原因で皮膚に問題が生じるとマラセチアが異常に増殖して皮膚炎を起こすことがあります。また、マラセチア菌は『皮脂』を好むので、シーズーや柴犬など生まれつき皮脂の多い犬種で多くみられます。
また、湿度・温度の高い環境で増殖しやすいため梅雨~夏の時期にかけて発症が多くみられます。同じ理由から、身体の擦れやすかったり、ムレやすい場所(指の間、耳、首、わきの下、お腹や肛門まわりなど)で増えやすいです。
マラセチア菌へのアレルギー反応として皮膚炎が生じることもあると言われています。
肛門から陰部の付け根の領域を会陰部と呼びますが、この周辺の筋組織が萎縮し骨盤腔の脂肪や直腸、膀胱などが外に脱出する病気を会陰ヘルニアといいます。
中高齢の去勢していない雄犬に発症しやすく、症状はしぶりや排便障害、排尿障害がみられます。肛門周囲が膨れ上がり、便が正常に出ないことに気づき来院されるケースが多くみられます。
血管肉腫は、血管内皮細胞に由来する腫瘍で、様々な臓器に発生します。最も脾臓に発生しやすく、次いで心臓、皮膚、肝臓などにも認められることがあります。進行速度が早く、転移率が非常に高いことで知られる悪性腫瘍です。
特に怖い点として、血液を豊富に含むため出血しやすく、腹腔内で大量出血してしまうと、ショック状態となり救急処置が必要になります。
リンパ腫とは、免疫細胞の一つであるリンパ球が腫瘍化する疾患です。リンパ節や胸腺などのリンパ系組織の他、鼻腔内、消化管、脳神経、皮膚など全身のどこにでも発生する可能性があります。
以前は猫白血病ウイルスに関連してリンパ系組織に発生するケースが多くみられましたが、近年では消化器型リンパ腫が増加しています。
今回は猫の消化器型リンパ腫の症状や診断、治療についてご紹介します。
寒い季節になると猫ちゃんは飲水量が減り、尿のトラブルが多くなります。頻尿や血尿を見かけたことのある飼い主さんも多いのではないでしょうか?
特に、尿道が詰まり、尿が出にくくなる状態を尿道閉塞といいます。尿道閉塞が生じると頻尿や血尿だけでなく、尿がぽたぽた出る、排尿時に辛そうに鳴くなどの症状がみられ、さらに進行すると、尿が出なくなり急性腎不全によって死に至ることもあります。
犬の橈尺骨骨折は若齢の小型犬(トイプードル、ポメラニアン、ヨークシャテリアなど)に起こりやすい前肢の骨折です。
抱っこ中に誤って落下した際や、ソファーから飛び降りた際に起こりやすく、症状としては前肢の完全挙上が認められます。
犬や猫の歯石や歯周病、口臭は飼い主さんを悩ませる病気の代表で、よく相談をお受けします。
動物の歯科治療は専門医がまだまだ少ない現状で、人の歯医者さんの技術には及びません。しかしながら、近年では動物用の歯科レントゲン装置も普及してきており、治療レベルの向上に貢献しています。今回当院でも歯科用レントゲン装置を新たに導入しましたので、これまでのレントゲン画像との比較や実際の症例をご紹介します。
フェレットは犬や猫に比較して鳴き声がなく、お散歩の必要もないため飼いやすい動物として、近年ペットとして人気です。
一方で好奇心旺盛なため、色々な物を口にする習性があります。そのため、部屋に落ちている物を間違って食べてしまう事故で来院するケースが比較的多くみられます。
前十字靭帯は膝関節において、大腿骨の後方から脛骨の前方に走行し、膝関節の安定的な動きを支える重要な靭帯です。この靭帯が断裂すると脛骨が前方に飛び出し、足を負重することができなくなるため、跛行がみられます。
原因としては老齢化やホルモン異常などの基礎疾患による靭帯の脆弱化や、肥満による負重の増加がある場合に、膝に対して急激な力が加わることで発症すると考えられます。また膝蓋骨脱臼も発症要因となります。
頚椎の椎間板が突出して、脊髄を圧迫する病気です。症状の程度によりグレード分類されています。
グレード1の軽症例では抱き上げる時に鳴く、どこか分からないが痛がるなどの症状がみられます。痛みのレベルが強いと活動性が低下することもあります。
グレード2は足のふらつきなど神経学的な異常がみられます。
グレード3は起立困難、四肢の麻痺など重度の神経学的異常がみられます。
写真のわんちゃんは前後の足が前に突っ張り、起立困難な状態です。
肥満細胞腫は皮膚や皮下組織に発生し、稀に粘膜や内蔵にも見られることがあります。肥満細胞腫と聞くと、『肥満』と関係しているように誤解されがちですが、肥満細胞は正常な体にも存在して、皮膚や粘膜で炎症や免疫反応などの生体防御の働きをしています。細胞の形が膨らんだように見えるため、『肥満細胞』と呼ばれているようです。
写真は肥満細胞腫の顕微鏡写真ですが、顆粒をたくさん含んでいることが分かります。肥満細胞はヒスタミンやヘパリンなどの生理活性物質を多く含んでいるため、腫瘍を触ったりすると顆粒が放出され、周囲組織の炎症が起きたり(ダリエ徴候)、出血が止まらなくなる事があります。
今回は犬の先天性門脈—体循環シャント(いわゆる門脈シャント)の症例をご紹介します。
そもそも門脈という血管を聞いたことがない方も多いと思います。
門脈は肝臓に流れこむ主要な血管で、腸管で吸収されたアンモニアや細菌の毒素を肝臓で分解する役割を担っています。
門脈—体循環シャントが存在すると、肝臓で解毒されるべき毒素が全身へまわり、発育不良や尿路結石症、てんかん様発作などの症状が出てしまい、放置すると肝不全によって死に至る場合もある怖い病気です。
症例は8ヶ月齢のトイ・プードルの男の子です。3週間前から左後肢の跛行がみられ、他院を受診したが治らないとのことで来院されました。
レントゲン検査を行ったところ、写真のように左足の股関節に異常が認められました。
画像所見からレッグ・ペルテス病(大腿骨頭壊死症)と診断しました。
今回ご紹介する症例は耳道(耳の中)に腫瘍が出来てしまった10歳の猫ちゃんです。
1年程前から慢性的な耳漏(耳垂れ)に悩まされていましたが、細菌性外耳炎として治療を続けており、なかなか治らないとのことで当院を受診されました。
外貌からは腫瘤は確認できませんが、黒褐色の悪臭のある耳漏が蓄積していました。
このような耳漏は細菌性外耳炎やマラセチア性外耳炎、ヒゼンダニ症(耳ダニ)などの原因が一般的で、これらの病気と鑑別する必要があります。
肝臓は『沈黙の臓器』として知られ、病気が潜んでいても進行するまで症状がほとんどみられません。
末期になると食欲不振や嘔吐、下痢、黄疸などの症状がみられます。
今回ご紹介するワンちゃんは、ご家族の方が気付かぬうちに肝臓に大きな腫瘍ができていた症例です。
朝まで元気だった子が夕方帰宅するとぐったりしており、当院を受診されました。
検査の結果、肝臓に大きな腫瘍がみつかり、腹腔内出血による貧血を起こしている事が分かりました。写真は後日、CT検査でみられた肝臓腫瘍の様子です。
膝蓋骨内方脱臼(いわゆるパテラ)はトイプードルやチワワ、ヨークシャーテリア、ポメラニアンなどのトイ犬種に多く見られる異常です。
症状は、スキップのような歩行や足の挙上がみられます。
成長期に膝の滑車溝という溝が発達しない事などの骨格的な問題や外傷により発症します。
写真のワンちゃんはスキップを時々繰り返していましたが、急に後ろ足を挙げたまま痛がるようになり当院を受診されました。
14歳のトイプードルの男の子です。
4年前に血尿がみられてから他院で膀胱癌と診断され、ずっと薬を飲み続けていたそうです。
尿の出が悪い、血尿、頻尿といった症状が続いていて、今回当院を受診されました。
レントゲン写真では尿管の位置と膀胱の位置に結石が認められます(矢印)。
ワンちゃんやネコちゃんと暮らしていると、嘔吐や下痢を見かけることは比較的多いと思います。
多くは一過性のもので、数日で改善しますが、治りにくい場合は深刻な病気が隠れていいるかもしれません。
また、胃腸の病気は血液検査やレントゲン、超音波などの一般的な検査では異常が見つかりにくいため、異常が見落とされがちです。
そこで、有効な検査が内視鏡検査です。
内視鏡検査は腸の粘膜を直接観察でき、組織の採取も可能なため確定診断が得られます。
ウェルシュコーギーの7歳の男の子です。目のしょぼつきで近くの病院を受診していましたが、角膜の傷が2ヶ月間も治らないという主訴で来院されました。これまでは点眼薬のみで治療をしてきたようです。
来院時は右目から涙が垂れ、目をショボショボさせていました(写真)。
今年の2月で15歳になったパピヨンの女の子です。これまで大きな病気もなく元気に過ごしていましたが、先日、排尿障害を主訴に当院を受診されました。
排尿姿勢をとっても中々尿が出ず、一回に少量しか出ないようでした。
女の子のワンちゃんでは比較的稀な症状で、膀胱炎の症状とも違ったため、超音波検査とレントゲン検査を行うことになりました。
写真は超音波検査ですが、膀胱の背側に黒い影(腫瘍)がみられます。
今回は肥満の猫ちゃんが罹りやすい病気のひとつ、肝リピドーシス(脂肪肝)の症例をご紹介します。
写真は嘔吐と食欲不振で他院を受診し、1週間程入院したが治らないとの事で当院を受診した10歳の雄猫ちゃんです。
来院時には黄疸(皮膚や目の粘膜が黄色く染まる)がみられ、食欲は全く無い状態でした。
わんちゃんと生活している方なら、一度は異物の誤飲に悩まされたことがあるのではないでしょうか?
好奇心旺盛なので色々なものを口にくわえて、無理に取ろうとすると飲み込んでしまったり、帰宅したらテーブルの上の焼き鳥を食べてしまっていたり…。動物病院にはそんなわんちゃん達の急患が非常に多くいらっしゃいます。
多くのケースは胃内異物として発見され、吐かせる処置や内視鏡摘出で対応できますが、最悪は腸閉塞を起こし手術に至ることもあります。
今回ご紹介する症例は比較的まれな例ですが、与えたオヤツが食道に詰まってしまったわんちゃんです(写真の子はイメージです)。
写真は血尿を主訴に来院した2歳のウサギのお尻周りの様子です。
血混じりの尿が被毛に付着していることが分かります。
ウサギの血尿の原因としては尿路結石や膀胱炎、子宮疾患等が考えられます。
この症例は診察時に触診で腹部にしこりが触れたので、超音波検査を実施しました。
今回ご紹介する症例はヨークシャーテリアの10歳の女の子です。
写真のように大きなシコリが乳腺領域にみられます(点線)。
数ヶ月前から少しずつ大きくなってきたとのことで当院を受診されました。
写真のわんちゃんは8歳の柴犬の男の子です。1年以上前からアトピーによる難治性の皮膚病と診断され、他院を受診していましたが、中々治らないとの事で当院を受診されました。
初診時、背中には痂皮を伴う大きな脱毛と色素沈着がみられ、お腹側にも同様の皮膚病変がみられました(下図)。
以前から心臓の雑音を指摘されていた13歳のシーズーの症例です。
いつも通り散歩していたところ突然失神したとのことで来院されました。
左の写真はその時の心臓超音波画像です。