フェレットは犬や猫に比較して鳴き声がなく、お散歩の必要もないため飼いやすい動物として、近年ペットとして人気です。
一方で好奇心旺盛なため、色々な物を口にする習性があります。そのため、部屋に落ちている物を間違って食べてしまう事故で来院するケースが比較的多くみられます。
症状
フェレットが誤食をした場合の症状として、「元気はあるけど、フードを残すようになった」、「フェレットバイトは食べるけど、ドライフードは食べない」、「少し痩せてきた」などの食欲不振や下痢が初期症状として見られます。異物を食べた事が明らかであれば診断は容易ですが、多くの場合は誰も見ていない所で誤食事故が起きます。
異物が胃に留まっているうちは強い症状はみられませんが、腸閉塞をおこすと重度の脱水やショック状態に陥り、放置すると死に至ることもあります。そのため、誤食が疑われた場合には早めに動物病院の受診をおすすめします。
診断
上記のような症状の原因には様々な病気が想定されますので、誤食以外の異常がないか血液検査やレントゲン検査などを行う必要があります。
しかしながら、レントゲン検査では金属や石などのミネラル質の多い異物は検出可能ですが、布やビニール、プラスチック、ゴム製品などの異物は診断に苦慮します。超音波検査でも異物を類推する事はできますが、確定に至ることは少ないです。そのため、誤食をしたかどうか明らかでない場合は診断にとても苦労します。(症例1のレントゲンでは異物が見えますが、症例2の異物(毛玉)はレントゲンに写りません)
症例2の胃の超音波検査では食事を摂れてない割に内容物が多量に観察され、異物の存在が疑われました。
また、犬や猫では内視鏡検査が異物の診断に有効な手段ですが、フェレットは体格が小さいため、内視鏡を用いた診断や処置が困難であるため、最終的な確定診断には試験開腹が必要になることがあります。
治療
治療は基本的に開腹手術が必要です。胃や腸の切開を行い、異物を摘出します。手術がうまくいけばほとんどの場合は数日中に元気になり、元の生活に戻れます。異物により消化管穿孔を起こしてしまっている場合には症状が重篤化しますので、入院が長引く可能性があります。
手術の様子
症例1のフェレットは消しゴム状の異物が小腸に閉塞していました。
来院時は食欲もなく、重度の脱水状態でしたが、術後翌日から元気になりました。
症例2は食欲不振で来院し、異物の誤食が疑われましたが、胃の内容物は巨大な毛玉でした。このような繊維の塊はレントゲンには写らないため診断に苦労します。
まとめ
フェレットの誤食は注意しているつもりでも起こりうる事故です。普段から拾い食い癖のある子は、留守番中に部屋でフリーにさせないようにするなどの注意をしましょう。また、異常がみられた場合には早めに動物病院にご相談ください。