自然発生性の慢性角膜上皮欠損(SCCED)

ウェルシュコーギーの7歳の男の子です。目のしょぼつきで近くの病院を受診していましたが、角膜の傷が2ヶ月間も治らないという主訴で来院されました。これまでは点眼薬のみで治療をしてきたようです。

来院時は右目から涙が垂れ、目をショボショボさせていました(写真)。

角膜染色検査(フルオレセイン)では緑色に染まる角膜上皮欠損(傷)がみられ、正常にみえる角膜下にも染色液が浸潤していました。

角膜上皮が簡単に剥離してしまいます。このような状態は慢性の角膜上皮欠損(SCCED)と呼ばれ、通常、点眼のみでの治療は困難です。


この病気は角膜実質の表層と角膜上皮細胞の接着異常のため、傷が治らないというものです。

そのため、治療はあえて角膜に傷をつけ治癒を促進する外科的介入が必要となります。

本例は写真のように角膜に格子状切開を加え、最後に瞬膜フラップを行いました。

手術後12日目の写真です。すでに傷はなくなり、目のショボツキも消えました。

点眼のみでは2ヶ月も治らなかった病気が、角膜に切開を加えたことで速やかに治りました。

角膜に傷をつけてしまうワンちゃんは非常に多く見受けられます。他の子と喧嘩したり、散歩中に植物が目に入ったり、自分で擦ったり原因は様々です。ケージに取り付けるタイプの給水ボトルが原因と思われる事例も多くみられるので、繰り返す子は生活環境を見直す必要性もあるでしょう。

単純な角膜びらんは、ほとんどの場合、点眼治療を5日〜7日続けると完治しますが、それ以上治療しても治らない場合は本例のような病気を疑う必要があります

 

治癒後は写真のようにワンちゃんもご満悦です!