犬のマラセチア性皮膚炎

 マラセチアとはカビの一種(真菌)で、健康な動物の皮膚や耳道などに常在しています。しかし、アレルギーなどが原因で皮膚に問題が生じるとマラセチアが異常に増殖して皮膚炎を起こすことがあります。また、マラセチア菌は『皮脂』を好むので、シーズーや柴犬など生まれつき皮脂の多い犬種で多くみられます。

また、湿度・温度の高い環境で増殖しやすいため梅雨~夏の時期にかけて発症が多くみられます。同じ理由から、身体の擦れやすかったり、ムレやすい場所(指の間、耳、首、わきの下、お腹や肛門まわりなど)で増えやすいです。

マラセチア菌へのアレルギー反応として皮膚炎が生じることもあると言われています。


診断について

症状や犬種、病変の場所、臭いなどからマラセチア症を疑い、病変部からサンプルを採取して顕微鏡で観察します。マラセチア菌はピーナッツ状・ボーリングのピン状と呼ばれるような独特の形をしています。

皮膚がベタベタして脂っぽくなってきたり、皮膚の赤みや痒み、フケがでてきたり、マラセチア特有の臭いでおおよそ疑う事が可能です。

ニキビダニ症やアトピー性皮膚炎などとの鑑別が必要です。

 


治療について

①   シャンプー

抗真菌成分の入ったシャンプー、脂質や皮質を溶かす成分の入ったシャンプーを使って薬浴を行います。シャンプーをすることによって、皮膚にいるマラセチア菌自体の数を物理的に減らすことができます。また、マラセチア菌の好む皮脂を減らすことで、皮膚をマラセチア菌が増えにくい状態に整えることができます。

当院ではオゾンを使ったナノバブル発生装置を用いて薬浴も行っております。通常の薬用シャンプーより、治療効果や匂いの抑制効果が高まります。

 

②   抗真菌薬

抗真菌成分の入った外用薬や内服を使用することもあります。

 

③   基礎疾患の治療

皮膚炎が発症・悪化してしまう背景には、その子が元々かかえている病気(アレルギーやアトピー性皮膚炎などの免疫疾患、内分泌疾患、腫瘍)があることがあります。その場合には、基礎疾患の治療も合わせて行っていく必要があります。


当院での治療例

トイプードル、9歳、避妊雌

頭部から足先にかけて全身に紅斑がみられ、左後肢は痒みからか舐め壊してしまっていました。皮膚は全体的にカサカサしていて、フケも目立ちます。

皮膚検査を行いマラセチ性皮膚炎と診断しました。

抗真菌薬の内服と薬用シャンプー、皮膚の保湿剤を処方しました。

治療開始後1週間で皮膚の赤み、痒みは改善が見られ、抗真菌薬の内服を3週間継続してもらい、(その間自宅で週に一回のシャンプーによる薬浴)治療開始して約1カ月で治療を終了しました。

その後は自宅でのシャンプーのみで管理して頂いています。


ペキニーズ、7歳、去勢雄

首の下から前胸部と前肢にかけて脱毛と紅斑がみられました。

抗真菌薬の内服と週に1回の薬浴を行い、写真のように順調に皮膚の状態は改善していきました。


ミニチュアダックス、15歳、避妊雌

脇の下から前胸部にかけてと下腹部から内股にかけての大きな範囲に紅斑と皮膚の苔癬化が目立ちました

本症例も同様に抗真菌薬の内服と週に2回の薬浴を実施しました。徐々に改善がみられ、治療開始2カ月後には皮膚の赤みも消失し発毛も見られるようになりました。


飼い主さまへのアドバイス

マラセチア菌は人にも感染することもある病気です。健康な人であれば大きな問題になることはありませんが、免疫機能の低い赤ちゃんや高齢者のいるご家庭では犬を触ったあとはよく手を洗うなど、マラセチア菌を移さない様に気をつける必要があります。

また、マラセチア性皮膚炎は、定期的にシャンプーを行い、皮膚をマラセチア菌が増えにくい状態に保つことが大切で、飼い主様の努力と熱意が治療のキーポイントになります!努力して頂くご家庭ほど、内服薬に頼らずにシャンプーだけで改善しますので、成果が得られると飼い主様にもやりがいを感じて頂けると思います。

痒みがなくなり、わんちゃんが気持ちよく生活できるように一緒に治療していきましょう🐶


オゾンナノバブルについて

当院では、ご自宅でのシャンプーが難しい子や、予防的にシャンプーしたいという方向けに薬用のシャンプーを使ったスキンケアのサービスを行っております。

シャンプーの際には殺菌力・脱臭力の優れたオゾンナノバブルペットシャワーを導入しており、皮膚の活性化やターンオーバーの正常化を促します


今回の症例紹介は高崎先生が担当いたしました。

皮膚病や予防医療などを主に診療しています。どうぞよろしくお願い致します。