犬の椎間板ヘルニア

動画のわんちゃんは夜中に突然キャンと鳴き、それから動けなくなってしまい当院を受診されました。来院時は動画同様に後肢の麻痺がありました(動画はリハビリ時の様子)


椎間板ヘルニアの診断は容易ではなく、詳細な神経学的検査(身体検査)の後に、全身麻酔をして脊髄造影検査MRI検査CT検査のいずれかを必要とします。

当院では脊髄造影検査(写真)によって診断をします。

この利点は椎間板ヘルニアの責任病変(一番悪いところ)を見分けやすい点とコストがかからない点、1回の麻酔でそのまま手術まで出来る迅速性が挙げられます。

脊髄造影検査をすると写真のように単純レントゲンでは見えなかった脊髄が矢頭のようにくっきりと観察できます。

 

しかしながら、脊髄炎や脊髄腫瘍など椎間板ヘルニアと似たような症状を示す病気がまれに存在します。このような病気はMRIでしか診断できないため、症状や経過をみて、必要性のある場合はMRIのある施設を紹介する場合があります。

本例の場合は第2〜3腰椎間に造影剤の欠損がみられたので、脊髄造影法にて椎間板ヘルニアと診断しました(矢印)。

 

 

写真は手術中のものですが、矢印のように脊髄がみえるように椎骨を削っていきます。

神経を圧迫していた椎間板物質を取り除くことができれば手術完了です。

今回手術したワンちゃんは発症時グレードⅣというステージで、後ろ足は完全に麻痺していましたが、術後3週目には動画のように両足ともしっかり使えるようになりました。

 

椎間板ヘルニアは見た目だけで確定診断することは難しく、上述のように精密検査が必要となります。

残念ながら、以前はヘルニアの治療にはステロイドが効くとされていたため、麻痺がみられた症例に高容量のステロイドを投与する先生もおられます。しかし、重篤な胃潰瘍や血栓症で死亡する例も知られており、現在では推奨される治療ではありません

程度の軽い椎間板ヘルニアは安静にすることで症状が改善することが分かっていますので、当院では手術の必要性のない症例には厳密なケージレストを推奨しています。

 

椎間板ヘルニアは「後ろ足の麻痺」でよく知られた症状ですが、「抱く時に痛がる」など初期症状ではどこが悪いのか分からない事も多くみられます。何か異変を感じたら早めにご相談ください。