犬の先天性門脈-体循環シャント

今回は犬の先天性門脈—体循環シャント(いわゆる門脈シャント)の症例をご紹介します。

そもそも門脈という血管を聞いたことがない方も多いと思います。

門脈は肝臓に流れこむ主要な血管で、腸管で吸収されたアンモニアや細菌の毒素を肝臓で分解する役割を担っています。

門脈—体循環シャントが存在すると、肝臓で解毒されるべき毒素が全身へまわり、発育不良や尿路結石症、てんかん様発作などの症状が出てしまい、放置すると肝不全によって死に至る場合もある怖い病気です。

稀に認められる異常で、避妊や去勢手術の術前検査で偶然発見されるケースや、症状が出てから発見されるケースがあります。

当院では昨年3症例遭遇しましたが、2例は肝性脳症による痙攣発作や異常行動を発症し、重篤な状態でした。1例は健康診断で偶然見つかりました。

診断は血液検査で総胆汁酸アンモニアの測定を行い、肝機能を調べる必要があります。さらにレントゲンで肝臓のサイズの確認と、可能であれば超音波検査で異常血管を確認します(写真)。

確定診断にはCT検査や開腹下での門脈造影検査が必要です。

比較的稀な病気なので、病気が疑われた場合には大学病院等の受診を提示していますが、当院でも門脈造影検査と手術を行う事も可能です。

当院で行った門脈造影検査の写真です。左は正常な門脈造影像で、肝臓内に門脈が流入している事が分かります。右は門脈シャントの症例で、肝臓へ流入する血管の手前で、蛇行して後大静脈に流入する異常血管が認められます。

治療は内科治療と外科手術がありますが、この病気は内科治療では治らないため、通常外科手術をお勧めします。異常血管を完全に閉鎖できれば根治が望めます

また、手術の際には門脈圧の測定も必要となります。

写真は後大静脈に流入する異常血管を示しています。

先天性門脈−体循環シャントは、近年、若い小型犬の避妊・去勢手術の術前検査から偶然発見されるケースが増えているように思います。一方、てんかん発作と同じような神経症状が出てから発見される場合があるので、この病気と特発性てんかんを間違えないように注意する必要があります。