犬の肝臓腫瘍

肝臓は『沈黙の臓器』として知られ、病気が潜んでいても進行するまで症状がほとんどみられません。

末期になると食欲不振や嘔吐、下痢、黄疸などの症状がみられます。

今回ご紹介するワンちゃんは、ご家族の方が気付かぬうちに肝臓に大きな腫瘍ができていた症例です。

朝まで元気だった子が夕方帰宅するとぐったりしており、当院を受診されました。

検査の結果、肝臓に大きな腫瘍がみつかり、腹腔内出血による貧血を起こしている事が分かりました。写真は後日、CT検査でみられた肝臓腫瘍の様子です。

肝臓の腫瘍は外科的な摘出ができれば予後が良く、手術が治療の第一選択となります。

そのため本症例も当院で手術を行うことになりました。

開腹すると、写真のように大きな腫瘍が肝臓に認められます。

摘出した腫瘍は肝細胞癌と診断されました。

 

本症例はお腹の中で出血を起こし、容態が急変したために来院されましたが、肝臓腫瘍は健康診断などで偶然みつかる事の方が多いように思います。

しかしながら、超音波検査などで肝臓の『デキモノ』が早期にみつかったとしても、良性病変と悪性病変は見分けが難しく、確定診断には外科切除と病理組織検査を必要とします。そのため、小さな病変の場合には針生検をするなり、経過を追うなどして手術を行うか判断していきます。

いずれにしても、腫瘍は早期に発見し治療した方が根治が期待できますし、腫瘍が大きくなるまで症状はほとんど現れませんので、定期的な健康診断の重要性を改めて思い知らされる症例でした。