排尿障害を引き起こした膣腫瘍

今年の2月で15歳になったパピヨンの女の子です。これまで大きな病気もなく元気に過ごしていましたが、先日、排尿障害を主訴に当院を受診されました。

排尿姿勢をとっても中々尿が出ず、一回に少量しか出ないようでした。

女の子のワンちゃんでは比較的稀な症状で、膀胱炎の症状とも違ったため、超音波検査とレントゲン検査を行うことになりました。

写真は超音波検査ですが、膀胱の背側に黒い影(腫瘍)がみられます。

単純レントゲン検査では膀胱の位置に僅かに腫瘍の影がみられますが、ほとんど見分けがつきません。

そこで、腫瘍の由来を特定するために膣に造影剤を注入しレントゲン検査(膣造影検査)を行いました。

すると写真のように造影剤が黒く抜けて、鶏卵大の大きな膣腫瘍が確認されました。

さらに、膀胱や尿管との位置関係を把握するために静脈性尿路造影検査を行いました。写真の矢印の所が膀胱で、腫瘍(※)とは別の部位である事が分かります。また、2本の尿管も確認できます(矢頭)。

膀胱を圧迫し尿道と腫瘍(※)の関係性も確認しました。尿道は腫瘍で押されているようですが、巻き込まれてはいないようです(矢印)。

 

これらの検査結果から、このワンちゃんの排尿障害は膣腫瘍による尿道の圧迫が原因であると判断し手術をすることになりました。

膀胱を反転し、膣を切開した写真ですが、白い塊(矢印)が腫瘍です。

摘出後、膣粘膜(矢印)が綺麗に観察できます。

摘出した腫瘍を病理検査に依頼した結果、『線維腫』という診断でした。

 

膣の線維腫は避妊していない高齢犬にみられる良性腫瘍です。ホルモンとの関連が指摘されており、同時に避妊手術をすることで再発のリスクは低くなります。

今回は骨盤腔の膣に発生しましたが、外陰部から大きく突出するケースもあり、いずれも手術が必要となります。

 

高齢のワンちゃんでしたが、4日程入院して元気に退院することが出来ました。

 

写真は退院後、抜糸も無事に終わり、久しぶりのトリミングを終えたところです。おしっこもスムーズに出るようになりご満悦です☆

よく頑張りましたね。