爪床の扁平上皮癌

症例はフラットコーテッドレトリーバーの8歳の男の子です。

数週間前から散歩後に足を拭く時に嫌がるとの主訴で来院されました。

よく観察すると左前肢の第2趾の爪周囲に炎症が起きており、指先が腫れていました。

一見すると爪周囲炎という皮膚炎なのですが、大型犬の指先には癌ができることもあるので、念のためレントゲン撮影を行いました。

その結果、黄色い矢印部分の骨が溶けている(骨溶解)ことがわかりました。


レントゲンで骨溶解がみられたので、やはり腫瘍が疑われたため、細胞診を行ったところ扁平上皮癌という悪性腫瘍が強く疑われました。

この腫瘍は完全に切除できれば根治が期待できるので、ご家族とも相談し今回は指の切除術を実施することになりました。

写真は手術時の様子ですが、手前の指が腫れていることが分かります。

写真は手術直後の様子です。

切除前は歩く時に痛がって跛行がみられましたが、術後は痛みも消失しました。

このあと10日程で抜糸し、ご家族と共に元気に過ごしてくれています!

切除した組織は病理学的検査で、扁平上皮癌と確定診断されました。

写真は骨の中に癌細胞が浸潤している様子です。

 


これからの時期は皮膚病が多くなりますが、皮膚病のなかには炎症のように見えるけど、実はガンだったという例が時々みられます。

今回は早期に発見され、幸い転移所見はありませんでしたが、放っておくと手遅れになる例もありますので、皮膚病だからと軽く見ずに早めに受診されることをお勧めします。