犬の口腔メラノーマ(悪性黒色腫)

口腔メラノーマ(悪性黒色腫)は、口腔内腫瘍のなかで発生頻度・悪性度ともに高い腫瘍です。進行が早く、発見された時にはリンパ節や肺に転移していることがあります。

発生部位としては歯肉が最も多く、舌や口唇などの皮膚粘膜移行部の粘膜面や軟口蓋にも発生します。

口からの出血や、よだれの増加、口臭の悪化で気づかれるケースが多いです。

メラノーマはメラノサイト由来の腫瘍のため、多くは腫瘍細胞にメラニン顆粒を含み、黒色あるいは褐色という特徴的な見た目でメラノーマを疑うことができますが(図の矢印)、この顆粒が乏しい場合(乏色素性メラノーマ)には口腔粘膜と同様の色をしており、見た目だけで判断することが難しいことがあります。

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犬の血管肉腫(脾臓・肝臓の腫瘍、ショック)

血管肉腫は、血管内皮細胞に由来する腫瘍で、様々な臓器に発生します。最も脾臓に発生しやすく、次いで心臓、皮膚、肝臓などにも認められることがあります。進行速度が早く、転移率が非常に高いことで知られる悪性腫瘍です。

特に怖い点として、血液を豊富に含むため出血しやすく、腹腔内で大量出血してしまうと、ショック状態となり救急処置が必要になります

 

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猫の消化器型リンパ腫(胃腸管型、大細胞性、抗がん剤)

リンパ腫とは、免疫細胞の一つであるリンパ球が腫瘍化する疾患です。リンパ節や胸腺などのリンパ系組織の他、鼻腔内、消化管、脳神経、皮膚など全身のどこにでも発生する可能性があります。

以前は猫白血病ウイルスに関連してリンパ系組織に発生するケースが多くみられましたが、近年では消化器型リンパ腫が増加しています

今回は猫の消化器型リンパ腫の症状や診断、治療についてご紹介します。

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犬の肥満細胞腫

肥満細胞腫は皮膚や皮下組織に発生し、稀に粘膜や内蔵にも見られることがあります。肥満細胞腫と聞くと、『肥満』と関係しているように誤解されがちですが、肥満細胞は正常な体にも存在して、皮膚や粘膜で炎症や免疫反応などの生体防御の働きをしています。細胞の形が膨らんだように見えるため、『肥満細胞』と呼ばれているようです。

写真は肥満細胞腫の顕微鏡写真ですが、顆粒をたくさん含んでいることが分かります。肥満細胞はヒスタミンやヘパリンなどの生理活性物質を多く含んでいるため、腫瘍を触ったりすると顆粒が放出され、周囲組織の炎症が起きたり(ダリエ徴候)、出血が止まらなくなる事があります。

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犬と猫の肺がん

肺がんは人と同じように動物にも稀に認められる病気です。家族が気づく最初の症状としては、空咳や呼吸困難、活力の低下などが挙げられます。しかしながら、症状がみられた場合は癌が進行している状態と考えられ、症状がない場合の予後は平均18ヶ月であるのに対して、症状がある場合は8ヶ月と報告されています。また、初期に発見されれば手術により根治が期待できますが、胸水が溜まったり、転移した状態で発見されると有効な治療法がないため、定期的な健康診断で早期発見することが重要な病気です。

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フェレットの副腎腫瘍

フェレットでは副腎腫瘍が比較的多くみられます。4〜5歳をピークに発症し、雌雄ともに発症します。

代表的な症状は脱毛ですが、写真のように部分的に脱毛する子から全身脱毛してしまう子まで様々です。

特に雄フェレットは前立腺肥大や前立腺嚢胞を伴うことがあり、排尿障害を起こすため非常にやっかいな病気です。

 

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猫の耳垢腺癌

今回ご紹介する症例は耳道(耳の中)に腫瘍が出来てしまった10歳の猫ちゃんです。

1年程前から慢性的な耳漏(耳垂れ)に悩まされていましたが、細菌性外耳炎として治療を続けており、なかなか治らないとのことで当院を受診されました。

外貌からは腫瘤は確認できませんが、黒褐色の悪臭のある耳漏が蓄積していました。

このような耳漏は細菌性外耳炎マラセチア性外耳炎ヒゼンダニ症(耳ダニ)などの原因が一般的で、これらの病気と鑑別する必要があります。

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犬の肝臓腫瘍

肝臓は『沈黙の臓器』として知られ、病気が潜んでいても進行するまで症状がほとんどみられません。

末期になると食欲不振や嘔吐、下痢、黄疸などの症状がみられます。

今回ご紹介するワンちゃんは、ご家族の方が気付かぬうちに肝臓に大きな腫瘍ができていた症例です。

朝まで元気だった子が夕方帰宅するとぐったりしており、当院を受診されました。

検査の結果、肝臓に大きな腫瘍がみつかり、腹腔内出血による貧血を起こしている事が分かりました。写真は後日、CT検査でみられた肝臓腫瘍の様子です。

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排尿障害を引き起こした膣腫瘍

今年の2月で15歳になったパピヨンの女の子です。これまで大きな病気もなく元気に過ごしていましたが、先日、排尿障害を主訴に当院を受診されました。

排尿姿勢をとっても中々尿が出ず、一回に少量しか出ないようでした。

女の子のワンちゃんでは比較的稀な症状で、膀胱炎の症状とも違ったため、超音波検査とレントゲン検査を行うことになりました。

写真は超音波検査ですが、膀胱の背側に黒い影(腫瘍)がみられます。

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うさぎの子宮疾患(子宮の癌肉腫)

写真は血尿を主訴に来院した2歳のウサギのお尻周りの様子です。

血混じりの尿が被毛に付着していることが分かります。

ウサギの血尿の原因としては尿路結石や膀胱炎、子宮疾患等が考えられます。

この症例は診察時に触診で腹部にしこりが触れたので、超音波検査を実施しました。

 

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